地域に活力を!元気を!を目的として、全国の地域広告会社が集まる協会です。

理事挨拶


会員社の団結心を強めたコロナ禍の3年間

 上機嫌ですか。
広告は社会の映し絵です。社会を元気にし、社会を創造するのが我々の役割です。我々が上機嫌でなければ、役割も使命も全うできません。広告会社は常に上機嫌でなければなりません。
 4年前の19年4月、少子高齢化の時代、とりわけ疲弊する地方を広告の力でなんとかせねばと、「つくりかえる。日本!」をスローガンに掲げました。まだ疫病の影もありませんでした。翌20年の総会は、横浜に寄港したクルーズ船で感染症が確認され、総会はオンラインとなりました。 「改革なくして、未来なし」をテーマとし、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナに備える。それが未来だと訴えました。
 21年にはコロナ禍を正面で受け止め、我々自身と地域・地方のデジタル化の促進に努める「地域にDX化を!」をスローガンとしました。そして、昨年の22年2月、ロシアによるウクライナ侵略が始まり、世界経済は混乱する事態となりました。
 しかし、「春の来ない冬はない」と信じ、22年度は広告の力で未来を切り拓こうと「広告は未来を拓く力」をテーマとし、3年ぶりにリアル総会を実施しました。全国共通商品の推進や地方自治体の課題にチャレンジする「アワード」の実施など、JLAAは試行錯誤を繰り返しながら活動を続けて参りました。
 コロナ禍は会員社の団結心を強め、現在の会員数は53社、賛助会員8社の61社であります。北は北海道から南は九州・沖縄まで47都道府県から艱難を乗り越えた仲間が集い、ここに、2023年度一般社団法人日本地域広告会社の定期総会を開催できますこと、改めて会員各位に感謝御礼申し上げます。

JLAA創立20周年
新聞広告からネット広告へ

 今年で創立20周年を迎えたJLAAですが、コロナ禍の3年余、「広告とは何か」「広告業界は存在するのか」「我々の生きてきた20年はなんだったのか」。そして「我々に未来はあるのか」「我々はどうあるべきか」を理事会などで議論を重ねました。
 この20年間、世の中も広告の世界も様変わりしました。象徴的なことが二つあります。一つは、新聞の総発行部数が往時の約5600万部から約2800万部(22年10月・新聞協会)に半減したことです。一時800万部を誇っていた朝日新聞が380万部を切ったと、トップ自らが文藝春秋4月号で語っています。朝日だけではありません。この5年間だけで購読部数が1000万部減少しています。年間200万部減少したことになります。200万世帯が新聞購読を取りやめ、単純計算では新聞が15年余で消滅することになります。新聞メディアは存亡の危機に陥っています。 新聞広告を取り扱ってきたJLAA会員の大半は、自ら変革しなければ生き残れない状況に追い込まれました。従来の広告ビジネスを転換するために様々な取り組みを実施してきました。この危機に、会員間の情報交換の重要性が認識され、JLAAの存在意義が見直されました。
 もう一つは、19年、ネット広告はマスメディア4媒体の総額を超え2兆円に達し、わずか3年で約1兆円積み上がったことです。今年2月、電通が発表した「2022年 日本の広告費」の総額は7兆1,021億円。前年比4.4%増、07年以来15年ぶりの過去最高を更新しました。
 しかし、その実態はネット広告の伸びで、14.3%増の3兆912億円。4マス媒体は2.3%減の2兆3985億円となっています。過去最高の更新はネット広告によるものであります。
 JLAA活動においても、ネットとリアルの融合こそがデジタル時代における広告のあり方ではないのかと、温故知新を踏まえた上での取り組みを進めてきました。ネット広告分野の仲間も加わり、マスメディア4媒体との共創の道を探っています。

盟主の驕りがもたらす
広告業界への影響

 東京五輪談合事件。電通を中心に大手広告代理店各社は東京五輪の運営にあたり談合事件を引き起こし、東京地検特捜部・公正取引委員会から訴追を受けているのは、ご存じの通りです。そもそもですが、電通はなぜ事件を引き起こしたのか。盟主の驕りだと、私は思っています。国際的なイベントを取り仕切るのは電通にしかできないという、絶大な力を持つ電通の思い上がりです。
 五輪組織委員会の中枢メンバーは電通の出向者。運営委託を受ける業者も電通。経験豊富な電通が担うのは至極当然ですが、利益相反が容認されたものではありません。加えて、五輪の運営費用は国民の血税であることも、電通には眼中になかったと言わざるをえません。経営トップが詫びることも、反省の色を見せることもなく、むしろ開き直っています。そんな傲慢な姿勢は、社会から指弾を受けるのは当然であり許されるものではありません。
 広告業界は利益至上主義であり、民主主義の規範やルールすら守れないと、国民に思われるとするなら、広告業界の未来はありません。歯を食いしばって仕事と向き合っている、ローカルな広告会社としては残念でなりません。
 この国は資本主義社会です。企業である限り、利益追求は当然です。しかし利益を追求するにあたっては、人を貶めたり、騙したり、法を犯すなど、悪どいやり方で利益を求めてはなりません。人間として守る道理があります。この事件を他山の石として、広告を生業とする者はどうあるべきか、どのように生きるべきかを、我々に教えてくれているのではないでしょうか。
 電通をはじめ談合した広告代理店やイベント会社は、中央省庁や地方自治体から指名停止の措置を受けています。当然であります。どうか、犯した罪に真伨に向き合い、また電通には業界の盟主としての矜持を取り戻して欲しいと願っています。
 JLAAはこれからも、青臭くとも社会のために、地域のために、真伨に広告と向き合って参りたいと思っています。

それでも我々はチャレンジした
広告の力で、地域と我々の未来を拓くために

 水と並ぶ命のインフラ、電気の料金が跳ね上がりました。ひとつの要因は火力発電所を動かすために必要な原油や天然ガスの高騰です。エネルギーが高騰すれば物価は上がり、景気回復が遅れ、賃金が上がらないという悪いインフレが巡ります。あらゆる格差を誘発し、対応できない中小・弱小の企業や商店は淘汰されてしまいます。
 政府は電気料金を抑える努力を続け、電力会社は電力使用の削減を呼び掛けています。これらの啓蒙活動を浸透させるのは広告の役割であり、広告の力は社会を覚醒させます。悪いインフレに歯止めを掛け、良いインフレへ導く、そんな社会の流れを招来させるのは広告会社の存在意義ではないかと、私は使命感を持って意気込んでいます。
 この3年間、コロナ禍の中、半ば強引にリアル開催した理事会では、広告という分野、業種は果たして生き残れるのか。存在意義はあるのか。そんな議論が繰り返されました。そのことを本日の総会では議論してみたいと思っています。
 広告とは、字の如く「広く知らしめる」ことです。我々は往々にして知らしめ方を議論します。ですから、マス媒体の動きやネット社会の効用に目を向けがちになり、レスポンスの高い媒体に走ります。それはそれで必然ですが、我々の本質は媒体を選択することではありません。直面するクライアントやスポンサーの成長発展のために何ができるかであります。
 大きくは地方自治 体の豊さを示すために何ができるか。遠くは社会全体の安寧のために不可欠なものを創造し、それを形に変えることにあります。それが広告であります。その本意を、ぶれず、揺るがず、突き詰めることができれば、我々の進むべき道、未来を見出せるのではないでしょうか。それが、広告を生業とする我々の生き様ではないかと思います。
 創立20周年を迎えた日本地域広告会社協会(JLAA)の今期のテーマは、「たかが広告・されど広告/広告の力で日本を覚醒!」とします。このテーマを深く議論して欲しいと願います。我々の生業は「たかが広告」かもしれません。しかし、「されど広告」であります。広告は人々を勇気づけるものであり、日本を覚醒する力があると信じています。
 最後に、長野県のアイク社長の関理事が我々のために、JLAAのテーマソングを作詞・作曲してくれました。どんな曲になったのか、今日お披露目です。広告会社は上機嫌でなければなりません。さぁ、テーマソングを声高らかに歌いながら、これからの20年を論じる23年度の定時総会を始めましょう。ありがとうございます。


2023年4月
一般社団法人日本地域広告会社協会(JLAA)
理事長 後藤 一俊

※「2023年度 一般社団法人 日本地域広告会社協会(JLAA) 20周年記念総会」挨拶文より。